お手本となる性質:ゆっくりと哺乳するので子牛はより健康に育つ

7. Juni 2024 — コウシキュウジ#哺乳 #CalfExpert #カゼイン #子牛の健康 #MilkBar #NativeCalfConcept #乳頭ペール #飲乳速度 #消化性 #科学
性質に注意することは例外なくよい考えです。

このことは子牛の給餌でも確かに適用されます。経営上の理由でここでは子牛を母牛から離し、「不自然な」乳頭付きペールで哺乳したり哺乳自動機を使用します。このプロセスは消費者からよく批判されます。しかしこれは正しいでしょうか。

母牛からの哺乳と人工哺乳を比較した場合、自然との相違点が見えてきます。
乳房からの授乳ペールでの哺乳または哺乳自動機(TA)での哺乳
一日当たり哺乳量6~10 ℓ6~12 ℓ
一日当たり哺乳回数6 – 102回(ペール)、4~6回(TA)
一回の授乳当たり哺乳量約1 ℓ3~5 ℓ(ペール)、2~3 ℓ(TA)
飲乳速度約200 ml/分700~1,000 ml/分
日次体重増加> 1,000 g500~1,000 g
健康通常は良好な健康状態であり、がぶ飲みはほとんど発生しません。頻繁に下痢や呼吸器疾患。グループ飼養ではがぶ飲みが頻繁に起きます。
* 自社での観察およびアナベル・ビーバーその他 2019 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7094284/

これら二種類の給餌方式には他の要因(飼養システム、全乳か代用乳での哺乳か、栄養強化剤等)が影響するとはいえ、何より最大の相違点は哺乳の速さ哺乳頻度です!

乳房では子牛が集中的に多く飲む必要があります。乳房が突かれると母牛のオキシトシン分泌が促され、このため母乳が出てきます。但し、積極的に飲む行動が無ければ子牛は乳房から一滴もミルクを飲めなくなります。

哺乳自動機または乳頭付きペールにはよくチェックバルブが装備されています。とても長い乳頭(最大10 cm、母牛の乳首は5~6 cmしかないがしばしばある)を通して子牛はしゃぶることによるだけではなく乳頭を押し付けることによってもミルクを飲むことができます。乳頭が挟まれることで子牛の口内へミルクがどっと流れ込めます。子牛が哺乳を中断したり全く飲み込んでいないことはよく観察されます。

早く飲む際の飲み込み

よりよい消化吸収性

ニュージーランドでは短く扱いにくい乳頭にとても人気があります。こうした乳頭で哺乳が遅くなり、チェックバルブ無しで機能します。すなわち、子牛が乳頭を押しただけでは、ミルクがペールの中に戻るだけです。ミルクを飲むには積極的にしゃぶることが必要です。

このしゃぶりつく動作が子牛には難しいのです。子牛は飲むのが遅くなり、ミルクを飲むためにはより努力せざるを得ません。集中的に大量の唾液が自然と流れ出します。この唾液は外からよく視認できますが、大部分の唾液は子牛がミルクといっしょに飲み込みます。

唾液はミルクの消化と子牛の健康のために様々な利点があります。

  • 唾液には子牛の免疫力が強くなる病原菌疎外因子である酵素系のラクトフェリン・ラクトペルオキシダーゼが含まれます。
  • 唾液はpH値が高いため酸性の胃袋の内容物に対して緩衝機能をします。ゆっくりと飲むことでミルクは胃袋内で凝集するのが遅いという有利な点があります。
  • また、唾液内の酵素が脂肪酸の消化を促し、乳糖を吸収代謝し易い単糖類のグルコースとガラクトースに分解します。
良好に濾過されたカゼイン

R.マッキネスその他 (2015)の実験では、子牛が扱いにくい乳頭からゆっくりと飲みつつ大量の唾液を分泌した場合、ミルクを摂取してから間もなく胃袋内ですでに大量のラクトースが分解されていることが示されました。胃袋内で凝集したカゼインの極めて微細な構造も確認されました。

画像提供はMilkBar社。
画像提供はMilkBar社。

扱いやすい乳糖で哺乳後の子牛の胃袋内に消化されにくい大きな塊が形成されていることが同じ実験で確認されました。

以上の事実は、子牛の場合、扱いにくい乳頭では体重増加量がより多いこと、それが乳糖とタンパク質の消化がよくなることに因っていることを説明していると考えられます。確かにこの点には確定的な科学的根拠が無いとは言っても、多くの現場での経験からミルクがよりよく消化されることも示しています。

より健康な子牛

吸い取る行動をせざるを得ないこと、これによって哺乳が遅くなること、さらに子牛の自然な哺乳姿勢により、食道の溝の形成が促されます。これで第一胃に直接ミルクが流れ込むリスクが減ります。短時間でミルクを多く飲む子牛の場合は、この他にも凝集しなかったミルクが胃袋から小腸に入り、そこで有害な細菌が大量に増殖する危険もあります。これに対して、扱いにくい乳頭でゆっくり哺乳させると消化が支持され、幼い子牛の場合に給餌関連の下痢が特に減ります。

がぶ飲みが減る

扱いにくい乳頭では子牛が向かい合ってがぶ飲みし合う問題が減ることが観察からもわかっていることは、もう一つの興味深い側面でもあります。哺乳の速さは、チェックバルブ付きの従来型乳頭での速さの半分から三分の一にしかなりません。すなわち、哺乳時間が二倍から三倍に長くなります。

孔開き乳頭付き哺乳自動機で計測された哺乳の速さ(哺乳ペールでは従来の乳糖で飲む速さがさらにはっきりと速くなる)

より長い哺乳には子牛のしゃぶり付いて吸い取りたい欲求を制御するホルモンがしばらくすると減少するという利点もあります。D. B. ヘイリーその他 (「Effects of Resistance to Milk Flow and the Provision of Hay on Nonnutritive Sucking by Dairy Calves」(乳牛の子の栄養摂取とはならない吸い取り行動に及ぶミルク流への抵抗および干し草の支給の効果)、1998)が四種類の乳頭の孔サイズを使い、最も乳頭の孔が小さい場合には哺乳時間が明瞭に長くなったことを特定しました。

これらの子牛では哺乳時間の後に牛舎設備やその他の子牛に対してしゃぶりつく行動が大幅に減りました。より速く哺乳を済ませた子牛では、最初に哺乳のために費やしたのと同じ時間、空の乳頭や牛舎設備、他の子牛に対してしゃぶりつく行動をしていました。

ロス・マキネスその他は2015年に同じような結論に至っていました。扱いにくい乳頭で哺乳された子牛グループではどの子牛も乳首が無事で傷ついていなかったが、速く飲んだ子牛は相互のしゃぶり合い行動をする傾向がありました。このため幼い乳首が傷ついたり、乳首を通常であれば覆っているケラチン保護層が剝がれていました。このため乳房が病原菌の侵入から保護されないため、若牛の炎症反応につながる可能性がありました。

ベケ・オステンドルフ(2019)さんの修士研究「二個の異なる子牛用乳頭が子牛の哺乳量に及ぼす影響」でも同じ結論に至っています。同氏は、哺乳が遅くなる乳頭だと子牛が哺乳直後から牛床に寝そべって休むことを報告しています。

競合プレッシャーの減少

ベケ・オステンドルフさんは遅い乳頭を正統な乳頭とも呼びます。こうした乳頭は子牛グループの子牛がすべて同じく長時間かけて飲むようになります。子牛個体別に見ると速い乳頭より哺乳時の前進傾向が減ります。例えば6頭の子牛がミルク30リットルを分かち合う必要がある場合、大型グループ用ペールが有利に働きます。こうした哺乳システムではミルクの取り合いがあまり問題になりません。

適正な乳頭位置

食道溝反射の成長は乳頭の形状と硬さによって促されるだけではなく、乳頭の位置によっても促されます。

並列配置した乳頭では下向きにぶら下がっている乳房の乳首の典型的な付き方に対応していません。乳房から飲む場合子牛は乳首を簡単に横に向けられます。しかし実際には乳首は斜め下向き方向になっています。Holm & LaueのCalfExpert等の先端哺乳自動機の場合、HygieneStationの乳頭は45°傾いて下向きに着いています。これによって子牛は自ずと哺乳のために首を長く伸ばした自然な吸い取り姿勢になります。

さらにもう一つの要因は乳頭の高さです。従来乳頭の高さ70~80 cmがよく推奨されていました。しかし、新たな現場経験に基づくと乳頭の高さは60~65 cm足らずのほうが自然な乳房の高さに近似しているため、有利と考えられることが示されています。この高さだと子牛はさらに集中的に多く哺乳する首の動作を示します。

哺乳回数の増大

今日推奨されているような一日10ℓの大量哺乳量は、子牛が一日に2回以上頻繁に哺乳されないと実現できません。

子牛が大量のミルクを低頻度の哺乳で摂取すると胃袋内のpH変動が極端に大きくなり(アハメドその他、2002年)、胃潰瘍(強酸性環境、つまり、pH3以下が長時間継続)およびミルクの凝集度が不足しやすくなります(アルカリ傾向が強い環境、すなわち、長時間pH5.5以上)。

子牛を可能な限り自然状態に近く飼養するには哺乳自動機での給餌しか選択肢がありません。一回に2リッター、最大3リッターで日次哺乳回数を多くすると最適なことが証明されました。

現場からの批判

ゆっくりと吸い取らせることには多くの利点があるとは言っても、多くの農場では扱いやすいシリコーン製乳頭のほうを好むか、乳頭開口を切って若干広くしています。その理由は、吸い取るか押し付けるかを問わず容易にミルクを得られる幼い子牛がより容易に学習できるからです。労働経済学的視点から理解しうることが、上記の子牛の快適な状態の改善に基づけば懸念となります。

扱いにくい乳頭のメーカー、例えばMilkbar社等はより学習しやすくするために扱いやすい導入用乳頭を提供しています。

まとめ

性質に注意することは子牛給餌の場合にも価値があります。日次10ℓを超える子牛に最適な哺乳量に加えて哺乳方式も重要です。第一に、扱いにくい乳頭では唾液分泌が促されて消化を助けます。第二に、子牛は長時間の努力せざるを得ない哺乳によってがぶ飲み傾向が減ります。第三に、一回当たり少量での頻繁な哺乳は子牛の消化力のために最適です。

レンラクサキ
子牛マニュアル

Holm & Laue 子牛マニュアル