今日、子牛飼養の主なテーマは成育、自動化、デジタル化です。弊社では可能な限りプロセスの時間が早くなり、費用効果が高い製品化に取組み、放置型の子牛飼養とはかけ離れて至る所で取組んでいます。これは経済的に見て確実に正統性があり、他の方法ではうまくいかないことが多いです。
一方では、農業はますます社会から批判を受けています。ヘルシーな子牛を育て、産出量の多い乳牛に育てるため、私たちが自然から学ぶことができるし、そうすべきことは何でしょうか。自然条件に可能な限り近い母牛と一緒の飼養から何を学ぶことができ、その知識を「従来型」子牛飼養に応用するにはどのようにすればよいでしょうか。
こうした課題にHolm & Laue NativeCalfConceptを使って解答することを試みています。
ここには以下の要素が含まれます:
1.初乳の最適供給
子牛の誕生直後の最も生きるために大切な第一回目の給餌の意義は強調しすぎてもまだ足りないほど重要です。子牛は初期免疫を初乳からしか得られないという限界にとどまらず、自然界でも子牛が立てるやいなや乳房を探し、初乳を飲むという最初にすることが同じだからです。
以上の自然な側面のほかにも、今後は農業に使用が認められている医薬品(特に抗生物質)の投与が減っていくことにも注意すべきです。従って、「治癒より予防優先」原則は倫理的に正しい対応であるだけではなく、近い将来に子牛が病気になった場合の処置方法が限られていることに備えて必要な対応でもあります。子牛に最適な免疫力があれば健康が増進され、必ずや接触することとなる病原菌に対する抵抗力が強くなります。子牛の初乳供給の正しい方法および免疫力の成長については多くの資料が存在し、議論されてきました。これにあまり多く追加されるものもありません!一例のみ挙げます:Godden et al 2019 : Colostrum Management for Dairy Calves.(乳牛の子の初乳管理)
初乳の適正給餌はNativeCalfConceptのその後の構成要素のための基礎を成します。このため以下に初乳の管理上主な注意点をまとめました:
1.1.最高品質:50 g IgG/リットル
1.1.1.免疫グロブリン濃度
初乳の免疫グロブリン濃度を制御して(Brix反射計を使用)文書化すべきです。IgG濃度が50 g/l (Brix > 22 %相当)では初乳を生後初の授乳で使用することができます。品質が低い場合、作成してある初乳ストックから良質の初乳に切り替えるか、実際に4ℓ以上消費されることを確認すべきです(1.2項参照)。
1.1.2.衛生品質
初乳の衛生品質は過小評価されがちです。通常の搾乳工程と同じように、子牛を生んだばかりの牛の場合にも仔細の清潔さと乳房の衛生に細心の注意をする必要があります。ただこれが子牛出産区画で搾乳する際に簡単でないことがよくあります!また、哺乳ピッチャー、哺乳ユーテンシル、哺乳ボトル、哺乳ペールも可能な限り洗って、必要なら消毒すべきです。衛生の不備があると以下の問題につながります:
- 免疫グロブリンの取得後、バリアーが閉まる前に細菌は開いた腸バリアーを通過して子牛の血管に侵入します。
- 免疫グロブリンは初乳の中ですでに抗体に対抗し始めます。このため時間の経過後は腸バリアーを通過する吸収のために不十分になってしまいます。これに伴って子牛の受動的免疫力は劣化します!
暖かい初乳が長時間放置されていても、病原菌は増殖します(20分で母集団が倍増)。従って数時間後に哺乳する場合冷却しておく必要があります。
1.2.適正量:4 ℓ
適量の抗体(免疫グロブリン、特にIgG)が子牛に摂取されるためには、初乳の品質に加えて量も決定的に重要です。目標摂取量を200 g IgGとすべきです!初乳1ℓ当たり50 gのIgGという適量であれば子牛はおよそ4ℓのミルクを飲むべきです。この値は子牛の体格にも左右されます。原則値:出生体重の10 %としてください!ただし、現場ではスタッフができるだけ作業しやすくする必要があります。すなわち、スタッフが暗算する手間を無くす!
1.3.最適な時点:生後1時間以内
生後1時間以内に抗体は特殊吸収プロセスによって腸壁を通過することができます。免疫グロブリン等の大きいタンパク質分子は腸壁を通過できます。すでに説明したように、このことは細菌や他の病原菌についても同様です。従ってこの「メカニズム」は数時間しか続かず、腸バリアーが閉じます。生後4~6時間もするとすでに抗体の吸収容量は誕生直後初期容量の50 %にしかなりません。生後12時間で受動的免疫の時間枠は完全に経過してしまいます。
従って子牛の生後最初の1時間こそ高品質な初乳の制御された投与のために最適な時点となります。この時点では子牛の飲み込む反射がまだ十分あり、原則的に必要とされている4ℓを自発的に消費していることも追跡すべきです。
まとめとして次の原則に従いましょう:
初乳の供給こそ将来子牛が元気に育つため決定要因であることは不変の重要性です。どの農場主もこの際明確に計画された作業手順を決め、成功についても制御するだけの準備をしなければなりません。
2.原料ミルクと全乳の投与
二回目の搾乳からミルク工場に初出荷するまでの原料ミルクにはさらに貴重な抗体その他の必須生態活性物質等の成分が含まれており、これらは腸内で局所ごとによい効果があり、腸絨毛の発達と腸内細菌叢の発達を促進します。栄養価の高い成分でさらに健康な腸内細菌叢の定着を促すために可能な限り長い間哺乳すべきです。
次に全乳を優先して与えるべきです。全乳は幼い子牛の消化酵素に最適に適合しています。幼い子牛は高品質のカゼインと乳糖しか消化できないためです。生後4~5週間まで胃袋内の酵素組成では植物タンパク質と炭水化物の消化能力がありません。
技術的前提:
ただし、全乳の給餌では保管、調製、哺乳の際非常に技術的な手間がかかります。
MilkTaxiはミルクをミルクスタンドやロボットで受け取るために最適です。MTXパスターの冷却機能によりミルクが冷却され、次の哺乳前まで確実に滅菌することができ、子牛が有害な病原菌に接触せずに済みます。
哺乳自動機がすでに多くの技術前提条件を満たしていることが必要です: 保管タンクに冷蔵機能があること。ここにミルクが12時間以上子牛の給餌用にすぐ使用できる状態を維持します。
最適な場合、ミルクタンクは哺乳自動機と通信してタンクが空になると哺乳機に信号を送ります。次に洗浄して再充填しなければなりません。新たな全乳スマート・コンセプトを搭載したCalfExpert哺乳自動機は、事前にタンク内の残ミルクを検出し、空になる予定時間を計算します。また、CalfExpertは次回の充填までに必要なミルク量を計算することもできます。
このためミルクのストック余りが少なくなり、全乳給餌が非常に経済的になります。CalfExpertでは当然全乳タンクを自機の洗浄システムに統合することも可能です。
CalfExpertとMilkTaxiで全乳管理を成功させるための技術的前提についてこちらのブログをご覧ください!
3.適正な代用乳
前記のように、生後4~5週の子牛は最適な栄養素としてカゼインと乳糖が欠かせません。初期に全乳を与えられないため代用乳をやる場合なら、幼い子牛のために最高品質と最高の消化性に注意しなければなりません。どのMATでもこれらの条件を満たすとは限りません。従ってMATを選定する際は成分を正確に把握する必要があります。必要ならMATサプライヤーから例えば次のようなデータを得てください:
3.1.MAT(代用乳)の重量モル浸透圧濃度:
タンパク質と脂肪、微量栄養素等の成分以外のことにも注意すべきです。ほとんどすべてのMATは浸透圧が高いです!ここで重量モル浸透圧濃度は液体中の質量にある溶解成分の濃度です。濃度(重量モル浸透圧濃度)が異なる液体が透過膜で分離されている場合、液体は水による代替で濃度を平衡させようとします。例えば、このことが腸内で発生すると、腸内では腸壁細胞と血液の重量モル浸透圧濃度が腸内に溶解しているMATより低いため、腸内では体細胞から水分が失われる可能性があります。このため軟便や下痢もありえます。
血液の重量モル浸透圧濃度はおよそ350 mOsm/kgです。全乳の場合もまったく同じ値となっています。この場合自然飼料が子牛のニーズに正確に調整されています。ただし、多くの代用乳では600 mOsm/kg以上となっていあmす。
このテーマに関する詳しい情報はこちら重量モル浸透圧濃度ブログをご覧ください。
3.2.MATの脂肪分:
植物タンパク質と炭水化物とは異なり、子牛は植物性脂肪をとてもよく消化できます。このため代用乳にパーム油、ココナッツ油脂、類似の油脂を配合します。これらが子牛のためにとてもよい飼料であるとはいっても、こうした飼料作物の栽培が以前は熱帯雨林だった土地で疑義のある状態の中で行われていることがよくあるという批判にますます晒されるようになっています。可能な限り自然に近く、従って資源節約型の子牛への給餌について語るとき、これらの脂肪を地元で耕作されるアブラナやひまわり等の植物で代替する方法を見つけるべきです。ただし、最新の飼料実験からはこうした種子油が輸入品より子牛の消化によくないことが証明されました。科学研究により当面問題解決策が探求されており、製品がより消化されやすくなるように処理することが実験されています。
3.3.MATは子牛の離乳時に最適な手段です:
代用乳が子牛飼養に適さないかのような印象を持たれると困ります。実は逆が正しい: MATは正しく使用する限り多くの乳牛と子牛の肥育農場で優れた基礎をなします。全乳が子牛の消化のために最適に調整されているかのような文言も、子牛飼養が全乳でしか成功しないことを言っているわけではありません。
MATは年長の子牛をゆっくり離乳させる際に最適です。特に、下記のように、大量のミルク(自由哺乳まで)を与えるべきである場合でも、子牛全頭に間に合うほど十分な適した全乳がないことがよくあります。
子牛が栄養強化剤を食べ始める離乳期に、子牛の新たな酵素組成に品質を適合させたMATを与えることも可能です(例えば、ホェイ粉乳)。
4.飼料の種類をゆっくりと変えていく(全乳からMATへ等)
上記の異なる飼料(全乳とMAT)を使用する場合、一種類の餌から次の餌へ可能な限り円滑に切替えなければなりません。
消化系はよく新たな飼料に慣れるまで5~10日間が必要です。つまり全乳をMATに切り替える場合、ゆっくりと行うべきです。
MilkTaxiだとこれは難しいです。原則的にここでは全ての子牛のために均一組成の一種類配合とします。この場合子牛のためのゆっくりとした移行はあまりできなくなります。
ただし哺乳自動機CalfExpertではこの移行が非常に簡単にできます。ここでは対応する調整が飼料曲線で実施されます。毎日両方の飼料の配合比を変えます。
このことは特に二種類の代用乳で給餌する場合にも可能です。幼い子牛には高栄養価の代用乳、そして離乳期の子牛にはそのニーズに適合したMATをやります。
5.子牛の自然な哺乳行動
ミルク哺乳は例外なく乳頭哺乳とすべきです。これで自然な吸って飲むニーズを満足させる必要があります。乳頭がないペールでの哺乳は子牛の生理学に適さず、最悪の場合にはミルクが反芻胃に入ってしまう事態がありえます。
NativeCalfConceptでは自然な状態を目指しているので、子牛が母牛からいかに飲むかによく注意しました。通常、子牛は母牛のところへ行き1日に数回でも(6回から10回)母乳を飲みます。1回につき5分から10分約2ℓのミルクを摂取します。子牛はミルクを得るためにかなり「努力しないと」いけません。このことは乳房を押し上げる動作とよだれが大量に出ることからわかります。
NativeCalfConceptでは三点に注意するようお勧めします:
5.1.乳頭高さの調整:
ペールないし哺乳ステーションの乳頭位置は高すぎないこと。最適な高さはおよそ65 cmです。この高さは乳房の自然な乳首の位置にほぼ匹敵します。当然のことながら乳頭高さは年齢と品種別に調整する必要があります。幼いジャージー種の子牛の場合はおそらく乳頭の位置が低く取付けられているはずです。
CalfExpertのHygieneStationにある乳頭は以上の他にも下へ45°傾けてあります。これで子牛が首を長く伸ばすように活発になります。第二胃溝反射(旧語:食道溝反射)はこうした自然な哺乳行動によって最適に支持され、ミルクは第一胃(反芻胃)を迂回して消化管へ直接流れます。
5.2 集中哺乳、哺乳減速:
集中哺乳にもかかわらず子牛は乳房からミルクを非常にゆっくりと摂取します。一分に300~500 mlを超えることはめったにありません。すぐ口が届く乳頭付き哺乳容器から子牛は1分に1000 ml以上飲むことはよくあります。これが給餌担当者には嬉しいことで、子牛の哺乳が速く済むからです。これでは消化のためには最適ではありません。むしろ口が届きにくい乳頭のほうが好ましいです。子牛はゆっくりとミルクを摂取し、よだれが非常に減ります。このよだれには消化酵素が含まれます。乳脂肪分がよだれに含まれるリパーゼで分解されるほかにも、乳糖(ラクトース)の消化がよくなります。
届きにくい乳頭による次の利点は、子牛が乳頭からの長時間哺乳で疲れることが多く、藁に寝そべることが観察されることです。このため向き合ったかたちでの哺乳や牛舎設備を激しく舐める動作はごく稀です。
哺乳自動機で哺乳速度をよく追跡できます。平均して500 ml以下にすべきです。ゆっくりと飲ませることについて詳しい情報はMilk Bar社のウェブサイトをご覧ください。
5.3.毎回少量を多数回:
自然な状態では1日に数回子牛がミルクを求めて母牛のもとに近寄ります。この場合日次6回から8回の哺乳になる場合があります。生まれたばかりの子牛の胃袋はおよそ2ℓしか容量がありません。しかし容量で自然なミルク摂取力が限られているだけではありません。胃袋が成長し発育した子牛でさえ1回の哺乳でおよそ2ℓ程度で少量のミルクが胃袋内のpH値安定化のためには最適です。これは、ミルクが大量になると酸性の胃袋内環境においてはpH値が急激に下がることになり、次回の哺乳時までの長時間の一時休止中にpH値が大幅に増えるためです。このため消化不良以外にも場合によっては胃潰瘍や他の問題が発生することもありえます。従って最適には哺乳回数4~6回、毎回2~2.5ℓとして一日中に配分します。CalfExpert哺乳自動機で給餌曲線に対応する設定を行うことができます。ペール哺乳の場合、制御しつつ弱酸性のミルクと自由哺乳で行うことができますが、よく管理する必要があります。
6.代謝プログラミング
ミルク1日に10~12ℓの大量の給餌で子牛は速く成長します。このため後に若雌牛の成育から産出能力がある乳牛まで長期的によい効果が得られます。いくつもの国際的調査でこの認識は実証済みであり、現場では何度も確認されてきました。
以上のこと以外にも、ミルクが制限なく飲めることは幼い哺乳動物のためにごく普通のニーズです。牛ほど新生児用飼料の提供数が限られている家畜は他にありません。十分なミルク供給も幼い子牛のために満たしてやる必要がある倫理的要請です。
子牛に自由哺乳させる場合、生後初週中に8~10ℓを飲みます。翌週には一時期15ℓまで増えます。ミルクの品質と哺乳方法に関する上記のポイントに注意する限り、これらのミルク量を問題なく与えることは可能です。
但し二点が常に繰返し批判されます:
6.1.自由哺乳は費用が高い:
この種の哺乳では子牛飼料費が大幅に高くなることは事実です。さらに、ペール哺乳の場合ペールに残るミルクが捨てられていることが多いことはよく批判の対象になっています。CalfExpertなら残ミルクが生じないためペール哺乳より有利です。子牛が飲みきれるだけの量が攪拌されます。
MAT哺乳の場合は子牛一頭当たりの追加費用が50~100ユーロになることもあります。すなわち、飼料費は倍増します!こうした費用でも以下のことで相殺される以上の効果が伴います:
- 獣医費用が下がり、子牛の健康が増進する
- 初産齢早期化の場合の飼養費用低下
- ミルク産出能力増大による収入増
- 群れの寿命が伸びるため若牛数が減る
世界中で十数件の研究によって代謝的プログラミングの生物学的、経済的利点は実証済みです。例えば、この場合「Preweaning milk replacer intake and effects on long-term productivity of dairy calves」(離乳前の代用乳摂取および乳牛子の長期生産性に対する効果)、 Soberon et.al.の最も広範囲に実施された調査を参照するとためになります。
6.2.栄養強化剤の後期摂取:
子牛が早めに栄養強化剤を食べ始めるべきであるという飼養目的は何度も言われてきました。自由哺乳のような大量のミルク摂取ではこの栄養強化剤摂取が遅延することになります。
しかし研究によると、集中的に哺乳を受けた子牛が後に高い飼料消費力があることが示されました。このことは消化および全体的代謝が多くの栄養素を代謝することに慣れていることが原因であると考えられます。このためミルクを生産する乳牛になったとき、より多くのミルクを産出する原因はここにあるのかもしれません。栄養強化剤は提供される栄養素をミルク量によりよく配合させるようです。
こちらのブログ記事で自由哺乳のためのその他の注記をご覧ください。
7.12~14週かけて後期にゆっくり離乳
子牛/若雌牛の消化能力は4~6ヵ月しないと成熟しません。この年齢で初めて異なる牛の胃のサイズ比が成牛のものに匹敵します。すなわち、逆に言えば、子牛はこの年齢にならないと成牛と同じように粗飼料と栄養強化剤を消化するこができません。ただし、この事実は同時に子牛が発育を阻害されないためにはこの年齢まで哺乳すべきであることも意味します。少なくとも一定の部分についてはこれがいえます。
従来、子牛は8~10週までに離乳されています。国によっては離乳がこれより早期の所もあるほどです。ただし、この場合子牛の対内で植物タンパク質および炭水化物をの分解酵素がじゅうぶん増加できるのが生後4~5週間であるための懸念も生じます。上記のように、自然界では若い牛が完全に離乳するまでさらに数週間かかります。子牛が8~10週で離乳されるのでは、消化系への負荷が大きいことが頻繁にあり、いわゆる離乳挫折という、子牛が1~2週間成長しなくなったり、果ては減量してしまうことさえあります。従ってこの年齢の子牛がミルクからのエネルギー損失を植物飼料でまだ完全に代替できないことがわかります。また、例えば一回の給餌が単に省略されることで急激な離乳が行われると子牛にとって劇的変化となります。
最新研究によると、以上に加えてさらに、発症しないままのアシドーシスで子牛がまいってしまうことがわかっています: 離乳させられた子牛は空腹感を覚え、通常は(この措置の本来の目的)より多くの栄養強化剤を食べます。第一胃でスターチ、糖質、炭水化物が分解されるとき、大量の短鎖脂肪酸が発生し、状況次第では第一胃でのバッファーが効かなくなる可能性があります。このため第一胃の胃酸過多になる場合があります。脂肪酸が大腸に入ると大腸アシ ドーシスにつながることもあります。(Neubauer et al 2020: Starch-Rich Diet Induced Rumen Acidosis and Hindgut Dysbiosis in Dairy Cows of Different Lactations(乳生産が異なる乳牛におけるでんぷん高濃度給餌に誘発されるルーメン・アシドーシスおよび後腸内菌共生バランス失調))
たいていの場合は、この弊害が発症しないままわからず、子牛は臨床前段階のアシドーシスで苦しみます。大腸炎および他の腸損傷につながることもあります。
ただし、このために6ヵ月間ミルクを実際にやるべきであることを意味していません。前提条件が良ければ子牛をより早期に完全離乳させることさえ可能です。従って5~6週間程で哺乳量を段階的に減らすことをお勧めします。離乳期間はさらに6~7週間かかる場合もあります。これで子牛は乾燥飼料を食べることにゆっくりと慣れることができると同時に、まだ一定の期間は消化がとてもよい哺乳を受けられます。
こちらのブログ記事をご覧になると、適正な給餌曲線のプランニングでの注意点がわかります。
8.目的: 健康な成牛!
8.1.栄養強化剤の摂取: 前のポイントで早すぎたり速すぎる栄養強化剤の摂取によるリスクについて取り上げました。結局、健康な成牛に育て上げるのがどの牛飼養農場でも目的です。従って、特に離乳時期に子牛に適正な乾燥飼料をやることが重要です。この際、子牛に上記のようなアシドーシスにつながらないように消化のよい飼料配合をやることが必要です。例えば、トウモロコシやカラス麦を子牛飼料に配合すると、非常に速く吸収される小麦でん粉より最適となります。
3件の記事でなるブログシリーズでは特に栄養強化剤の投与で注意すべき点を取り上げています。こちらでシリーズ第一回をご覧ください。
8.2.干し草、藁、サイレージのいずれがよいか
牛は最適な粗繊維質の変換者であることは周知です。このため干し草、藁、サイレージの提供を可能な限り長い間与えないままにして、子牛に栄養強化剤だけを与えるようにアドバイスする飼料コンサルタントの誤解をよく目撃します。わが社の観点では、良質の干し草や細断した藁の良好な構造化粗繊維をやることが子牛給餌の一部をなします。粗繊維なしでは特に第一胃壁がよく成長しません。これは反芻動作が第一胃の収縮能力に依存するためです。
また、粗飼料をやらないままだと子牛が構造化飼料の自然なニーズを満たせず、汚染された敷き藁を食べるリスクがあります。
9.幼い子牛のグループ飼養
自然界では母牛と生まれたばかりの子牛は誕生後数日間群れから離れます。これで幼い子牛が守られ、母牛との絆が深まります。群れの中では後から分離を再度観察することができます。次に同年齢の者がグループをなして群れから離れ、自分たちで世界を探求する子牛たちがいます。
これらの観察から現代の酪農場でストレスのない子牛のグループ飼養がどのようにして機能しうるかについて貴重な教訓が得られます。
- 農場の都合で誕生後に母牛と子牛を離す場合、子牛のわきに他の一頭を残してやると相互作用し、社会的つながりを養えるという意義があります。この場合、誕生後に離される子牛の心の傷はほとんど認識されません。ここでは2頭から3頭の子牛でなす小グループが適切です。子を離すことは母牛によってより痛みが大きいことです。しかし生後1~2日してから離すと、すでにより強い絆が出来ているので母の痛みはさらにはっきりと見えてきます。
- グループで子牛たちははしゃぎまわったり何かに夢中になる刺激を得る十分な場所が必要です。この際必要なことは、子牛が寝そべり、睡眠して、安静でいるための保護区画、給餌用の邪魔されない場所、さらに、支障なく動ける自由空間です。この際年齢差があまり広すぎないことが必要です。最適なのは年齢差2週間までとすることです。すなわち、グループは農場サイズに応じて特に大きくありません。子牛のための専有空間は一頭当たり2.5~4 m² 必要です。
当初は典型的な「妥協」のように見えること、すなわち、個別飼養から可能な限り頭数の少ないグループ飼養での子牛2頭(「ツイン飼養またはペア飼養」)を維持するのがよいことは、これまで現場で確認されてきました。子牛は優れた社会的関係を養われ、相乗効果が優れます。また、科学研究によると、ペア飼養の子牛たちはより多く食べ、個別飼養の子牛たちより体重増加率が高いことがわかっています。こちらのブログではいくつかのデータをご覧いただけます。
10.生後3日で哺乳自動機開始
TwinHutchでは飼養や最大5頭の小グループ子牛飼養には通常の場合ペール哺乳なのでいくつか弱点があります。慎重な給餌移行で自然哺乳のための上記の全項目を考慮する場合、哺乳自動機の使用がほぼ当然の必要性となっています。
これまで現場では子牛を生後2~3週間してから自動機に案内するのが標準です。この時点ではシングルまたはツインのヒュッテからより大きいグループに混ぜられます。しかし、これだと子牛を異なる二種類の哺乳システム(最初に(乳頭付き)ペール、次に哺乳ステーション)学習させるため追加の手間がたいへんかかります。
しかし多くの農場では生後3日ですでにCalfExpertを使用します。シングルベイやペアベイで子牛は最初に二日間初乳で哺乳されます。3日目、CalfExpertで学習させます。哺乳自動機で哺乳すると元気のある子牛なら生後一週間で日次10ℓのミルクを飲みます。
こうした早期のグループ分けに批判的な人は、最初に子牛が免疫力を発達させてからグループにしていくほうがよいと主張します。上記のように良好な初乳供給があればこの懸念は正当性がありません。
これでうまく機能するためにはグループサイズを最大15頭の子牛までに限るべきです。また後から2つのグループを一つにまとめるのは意味がありません。このためNativeCalfConceptでは最大15頭のグループサイズに止めることをお勧めします。最適にはグループ内の年齢差が3週間を超えないことです。この推奨では論理的に2つのことが帰結します:
- 三週間雌子牛の出生の方が少ない場合、グループサイズは15頭未満の子牛とすることも可能です。
- 10週間から11週間の哺乳段階では4グループが必要になります。つまり哺乳ステーション4基が必要です!(第1グループ: 1 ~3 週、第2グループ: 4 ~6 週、第3グループ: 7 ~9 週、第4グループ: 10 ~11週、プラス1週間の洗浄と空き状態)。
長期の哺乳段階ではより多めのグループにする必要があり、これに伴って哺乳自動機を一台追加することになります。
一目にはこの推奨が高価に見えますが、全体的経済性を見ると、作業負荷の軽減や獣医費用の削減につながることが哺乳自動機導入の利点となっています。
Holm & Laue NativeCalfConceptのまとめ
従来型で経済活動を行ってきた酪農場では、給餌と他の子牛たちとの社会的相互作用という子牛本来の自然なニーズを品種に適したグループ飼養で満たすアプローチが可能な限り牛の幸せを保証します。
農場にとっての経済利益も得られます。そのわけは、子牛の集中的かつ長期の給餌によるコスト高にもかかわらず、成長後には費用が下がり(健康がよりよく、繁殖力がより高く、寿命が延びる)、より高い産出高(より高いミルク産出能力で最大第2の搾乳)が得られるためです。
これなら農場経営者にも牛によい相乗効果があります!
乾乳期乳牛の管理と誕生管理
以下では完璧さにも配慮しつつ出生前の主なポイントについて取り上げたいと思います。子牛の健康は健全な母牛と優れる誕生管理に掛かっているためです。
A) 胎児が可能な限りよく発育できるためのストレスの無い乾乳期乳牛の管理
子牛の命は誕生から始まるのではなく、卵子の受精時点に始まります。母胎内で胎児が最適に保護されていても、母牛の飼養と栄養供給が子牛に誕生の前後(プレナタルおよびポストナタル)とも大きな影響を及ぼします
- 胎児発育への給餌の影響: 母牛の乾乳期、乳牛には二段階の給餌がよいことがわかっています。分娩の6~8週間前、低カロリークォータでの給餌を行い、母牛が肥らないようにし、肥った場合の子牛に及ぶ誕生の際の問題と母牛の代謝異常を防止します。最後の3週間胎児は急激に発育します。これに応じて母牛の給餌を変える必要があります。ここでは母牛をゆっくりと搾乳時の給餌割当に調整していくべきです。
- 胎児の発育に対するストレスの影響: 調査研究「B. Dado-Sehn et al 2022」および「Laporta et al 2017」によると、妊娠中母牛が高温ストレスを被った子牛は発育不良になることが判明しました。このため免疫力が劣化し、成育は乏しくなります。従って夏に乾乳期母牛を高温から保護することが重要です。
- 初乳の品質への影響: 乾乳期母牛の給餌が及ぼす初乳の品質への影響はあまりわかっていません。わかっていることは、誕生直後にたくさんミルクを取ると初乳が希釈されていしまうことです。初回搾乳で10ℓ以上初乳を取ってしまうとIgG濃度が低下することがしばしばあります。
ベータカロチンの供給が十分あると品質へのよい効果があるはずです。RotaCorona等による母牛のワクチン接種をしても抗体比率が増えるわけではなく、この病原体へのグロブリンの特異性が高くなります。
乾乳期のストレスも初乳の品質に悪影響があります。
B) 誕生管理
子牛の誕生は酪農場にとって大きな課題を投げかけます。子牛誕生は毎日のルーチン作業に計画することができません。また、誕生の所要時間とプロセスもまったく予想がつきません。
本来母牛が単独で子牛を産むべきで、たいていの場合これは可能でもあります。しかし時には助産が必要になることもあり、この場合明確に定義された手順を練習しておくと役に立ちます。子牛の誕生時の最適管理についてはウェブに説明やSOP、動画が豊富にあります。例えばドイツ語圏では「Dr. Katharina Traulsen und Dr. Marion Tischer」(カタリナ・トラウルゼン博士とマリオン・ティシャー博士)によるベーリンガー・マイハイムとの共同作成でわかりやすい案内書を取り上げることができます。また、「Initiative Tierwohl」(家畜の幸せイニシアチブ)にある誕生管理の仔細にわたり説明されている動画コースも読者が覚えておくとよいでしょう。
英語圏については例えば「Charles T. Estill「The calving process」」(チャールズ・T・エスティル「子牛の誕生プロセス」)が非常に詳しく制作されています。
以上からこの場では詳しく説明せず、ここでのテーマについては他の専門家を参照してください。