ドイツのシュレスビヒホルスタイン州エンビューレンにあるヘニング・キュールさんの乳牛農場で年間400から500頭の子牛が誕生します。その子牛の中の二頭が去年の秋誕生したディズニーとデルテです。
この記事では以下を取り上げます
この農場は380 haを経営しており、約400頭の乳牛から一頭当たり年産12 トンのミルクを搾乳します。ヘニング・キュールさんの農場には従業員が20人います。その一人がフィニャ・フリュヒテニヒトさんです。同僚とともにフィニャさんはこの農場で子牛飼養を担当します。この飼養専門家はディズニーとデルテの生活を誕生から離乳まで弊社のために文書化する手間を掛けていただき、キュール農場での子牛飼養プロセスについて全体像をご提供いただきました。
出産ボックス内の砂
子牛出産の兆候がはっきりしてくると、直ちに乳牛と若雌牛を出産ボックスに移動します。出産ボックスには砂を敷きます。生の牛床用藁とは対照的に乳牛は砂の層の上ではスリップせず、特に(難産だった)子牛出産後に高齢の乳牛は足が若干ふらつきます。
手入れをよくしていれば砂は臭いが立たず、病原菌もほとんど湧かず、またハエの問題もありません。砂の唯一のダウンサイドは出生時の子牛が「砂衣で塗れる」ことです。
ディズニーは2023年8月24日に黒との配色がカラフルな乳牛の子として誕生しました。その翌日赤毛のカラフルな子牛デルテが生まれました。キューる農場でたいていの子牛出産と同じく、二頭の出産も問題なく済みました。助産が必要な場合、農場では必ず誰かがすぐ駆けつけられます。
常に十分初乳が利用可能
一週間当たり多くの子牛が誕生することで初乳は十分に用意できます。搾乳後にBrix値を反射計で同定します。フィニャ産の場合規定値は22 %以上となっています。これ未満のものは初乳には分類されません。この値が高いほど、品質がよくなります。
初乳は日付とBrix値が記入されている個々の容器に入れられ、分娩ボックスの隣にある冷蔵庫で保管されます。十分に清潔な乳頭付きボトルと最適なアタッチメントは用意できています。使用後は使用したアクセサリーを再度洗浄します。
4 ℓの初乳を埋没式ヒーターで哺乳温度まで温め、次に乳頭付き哺乳瓶に移します。出生直後にまで自分で乳頭に食いつけない子牛は初乳を流し込まれます。これは特に難産の後によくあることです。
余った初乳や品質が劣る初乳は冷凍し、初乳製品メーカーに売却しています。
標準化された作業マニュアルが誕生後初の給餌規定を定めています
キュール農場ですべての作業手順は標準作業マニュアルに正確に文書化されています。写真入りで農場でのすべてのタスクが事例で示されています。フィニャさんの同僚もこれで行う作業がわかり、自分の担当を管理することができます。これは誕生後初の子牛給餌における次の手順に該当するだけにとどまりません。
出生後ディズニーとデルテの臍に滅菌スプレーで噴霧して消毒しました。生まれたばかりの子牛が乾きやすくなるように、加熱ランプの付いた加熱ボックスに入れます。子牛が程よく乾くと、新鮮な藁が敷かれたシングルイグルーに移されます。
明確なワクチン戦略で優れる免疫力
出生後第一週中、ディズニーとデルテにイヤーマークを付けます。この際取得する耳たぶパンチで採取したサンプルはBVD(牛ウイルス性下痢)ウィルス検査のため分析会社に発送されます。
搾乳されていない乳牛と若雌牛はロタウイルスとコロナウィルスさらに大腸菌に対してワクチンを接種されます。こうして子牛は初乳から優れる免疫力を得ます。さらに、この農場の子牛は全てが二回の鼻孔内ウシRSウイルス(BRSV) およびウシパラインフルエンザ3型ウイルス(PI3V)のワクチンを摂取されます。初回は誕生の二三日後に打ち、二回目は離乳直前に打ちます。この接種によって子牛の健康基盤ができあがります。子牛の生後14日以内の損失率は3~5 %となっています。但し、このデータには誕生前後の全損失数も算入されます。このため、フィニャさんはチームとともに達成した成果にとても満足しています。それでもさらに死亡率を削減するため新たな措置の作業を進めています。
自由哺乳、新鮮な水、ミュスリは自明のニーズ
子牛は出生日から一日二回乳頭付きペールで新鮮な弱酸性にされ栄養補完された全乳の自由哺乳を得ます。
また、どの子牛とも同じようにディズニーとデルテも出生日から新鮮な水をやります。特に暑い日や病気の初期症状があるとき、子牛は自由哺乳に加えて水を余計に飲みます。
この時点ですでに毎日新鮮なミュスリが与えられます。年齢が進むにつれて子牛の反芻行動が増えます。子牛は生後第8週からミュスリ以外にもまぐさやその後は貯蔵生牧草を与えられます。
キューる農場の哺乳計画
週 | 量の単位はリットル | |
---|---|---|
1~4 | 2 x 8 ℓ | ミュスリ |
5~8 | 2 x 4 ℓ | ミュスリ |
9~10 | 2 x 3 ℓ | ミュスリ、まぐさ |
11 | 2 x 2 ℓ | ミュスリ、まぐさ、貯蔵生牧草 |
12 | 2 x 1 ℓ | ミュスリ、まぐさ、貯蔵生牧草 |
フィニャさんは冬に霜の危険があるときだけ自由哺乳をしません。その場合は温めた割り当て済みの哺乳(ミルク4ℓを2回)に変えます。ただし、これでも子牛は大量に飲むので、ニーズは賄われます。
ミルク量は哺乳計画に沿って減らしていきます。生後第13週目、ディズニーとデルテは離乳されました。
必要なら「ぬくぬく気分の要素」も取り入れた牛床準備
毎日ネスティングスコアを求め、子牛に新鮮な藁を与えます。藁敷きの際は当然のことながら乾燥した暑い天候と雨続きの時を区別します。Igluは屋外に設置されるため、中にしか藁を敷きません。雨が降ると子牛とともにたくさんの湿気がIgluに入るため、毎日藁を補給します。Igluが個別に屋根の下に立っているのが当然最適といえるでしょう。ただこれは実際に農場ではできないことです。
冬には「ぬくぬく気分の要素」のために余計藁を入れます。寒い季節に子牛たちは毛布を掛けます。雄牛にも掛けます。フィニャはこの際区別をつけません。
下痢の際の電解質溶液
下痢が発生した場合、下痢している子牛には自由哺乳と水に加えて電解質容器もやります。このようにして子牛が十分に水分とエネルギーを得られ、水分損失分が補完されます。
28日目以降のグループ飼養
生後28日目にディズニーとデルテは小グループ舎に移動されます。このためにこの農場では異なる入庫方法があります。
Iglu-Verandaが2台と農場自作のシェルターが2基あります。ディズニーとデルテは下シェルターのうち一つで5頭グループに加わっています。個々の農場では子牛はマルチフィーダーを通してミルクを得ます。次に小グループは子牛舎内の大部屋イグルーで大きいグループに移されます。そこでは最大12頭分の乳頭付きペールが用意されています。
水とミュスリは常に自由に食べることができます。グループボックスでは様々な子牛向けおもちゃ(まぐさの玉、チューボール、引っ掻くためのマット、ブラシ等)で気分転換が図られています。
角落とし
生後6~8習慣で子牛は角を落とされます。角落としの30分前に子牛に鎮痛剤を打ちます。子牛は角落とし中麻酔を掛けられます。次に角が落ちた後露出した付け根に滅菌スプレーを掛けます。
フィニャさんはそれでも常に境界条件に注意します。悪天候や牛舎移動等の特殊な予定あるいは子牛にとって他のストレス要因が発生した場合は角落としを延期します。フィニャさんには原則:常に「イベント」は一つのみとすること、があります。
ディズニーのように遺伝的に角が元々無い子牛の場合、子牛飼養中にこの工程は不要です。
フィニャさんとチームの世話でディズニーとデルテは抜群に成長しました。弊社ではこれらの子牛が2年後に乳生産を開始し、それを継続する様子を楽しみにしています!
子牛飼養を垣間見させていただきありがとうございました、フィニャさん!